第9章 弱虫で強がり怯者
「忙しいだろうにごめんね」
運びながら隣の柳くんに話しかける
柳くんは空いた右手で
私の頭を優しく撫でた
今日はよく撫でられるなぁ
こんな姿見られたら
ファンクラブに殺されるよ
「俺に出来るのは
このくらいしかないからな。
少しでも役に立ちたいというものだ」
「でも私、柳くんに
なんにもしてないよ?」
「如月には直接的で無いとはいえ
辛い目に合わせてしまった。
すまなかった」
柳くんにも罪の意識があるのか
だから私に何かをして
許しを得て楽になりたいのだ
なんて卑怯
金坂さんにあれだけ強い事言ってて
なんて弱いんだろう
中学生というのは
こんなものなのか…?
「皆謝るけど…。
誰も謝罪する様な事してないじゃん」
「いや、俺たちの責任だ」
「私は大丈夫だよ!
骨折とかした訳じゃないし
無駄に丈夫だしね」
「如月は強いな…」
そう言われて
私は何も返せなかった
ただ笑って
そうかな?と誤魔化しただけ
彼は何を言ってるんだろう
私が強い?
違う 私は常に仮面を被ってるだけ
いつも本音とは裏腹の気持ちを
相手に見せてるだけ
それに、私が強いんじゃなくて
君たちが弱いんでしょ?
後先考えずに
感情に囚われて動いて
本人にではなくとも
罪悪感が染み出してきて
本当に、くだらない
「…それにしても
如月の担任は酷いな。
なぜお前に運ばさせるのか」
「あの先生って基本
人使い荒いんだよねー。
確かにちょっと酷いや」
「無理はするもんじゃないぞ?」
「してないから平気!」
こういう心配の仕方は
何だかお父さんみたいだ
だから柳くんも頼られる人なんだね
でも中身は子ども
近いため
職員室にはすぐついた
資料は担任の机の上にでも置いておく
「柳くんはこれから部活?」
「あぁ」
「頑張ってー。
立海テニス部」
「勿論だ」
じゃあ気をつけて帰れ、と
また頭を撫でられた
私は猫じゃないんだが
あぁ肩が凝った
手首を軽くぷらぷらとさせる
もういいか
早く帰ろうかな
今日の事は一応親にも
言った方がいいのか…
でも立海はテニス部のため
今回のことを大きくしたくないはず
きっと金坂さんが辞めた原因も
適当な理由をつくられただろう
大人って、ずるい