第7章 二頭追うだけじゃ物足りない
テニスコートに戻ろうかな
なんて思ったけど
金坂さんがどんな目に遭うか
想像は簡単に出来る
大体、今戻ったところで
なんで戻ってきたの?って
なっちゃうしね
また明日聞くかー
聞きたくなくても
噂で耳に入るだろうし
その日はさっさと帰って
次の日に備えて早く寝た
そしたら早く起きすぎてしまって
二度寝した結果
ただいまの時刻
7時
30分
「はっぁあああああ!??」
馬鹿か馬鹿か馬鹿か
私は馬鹿なのか
私はいつも準備のために
必ず遅くとも7時には起きる
遅くとも7時だ
ゆっくり行きたいから
だからそれより30分も遅いのは
とにかく危機すぎる
今までに無いくらい
猛スピードで制服に着替えて
髪を軽く整えて
階段を駆け下りる
朝ごはんは袋に入っている
六個入りのロールパン
適当にかぶりつきながら鞄の中に
お弁当を突っ込んだ
切原くんのハンカチも
パンは飲み物で流し込んで朝食終了
またもや猛スピードで
歯磨きと洗顔を終わらせて
準備完了
「いってきまーす!」
出るのは私で最後なので
鍵も忘れずにかける
よし、走ろう!!
…私って意外に脚力あったんだ
ギリギリだけど思ったより
余裕で到着した
息を整えて
深呼吸をしてから教室に入る
入った瞬間
みぃちゃん含めるファンクラブの皆様が
一気に駆け寄ってきた
え、何事
「蒼!大丈夫!?」
「な、なにが?」
「腫れが引いてないじゃない!」
あぁ昨日の事か
切原くん、いい感じに広げて
くれたんだね
助かったよ
他の子も大丈夫?とか可哀想。とか
色々言ってくれる
その優しさの皮を被った偽善に
大丈夫だよ、心配ありがとうなんて
笑いながら言った
今、私の立場は
嫌われてるマネージャーに罪もなく
暴力を振るわれた可哀想な子
って事なんだ
笑えるね
今まで目立つ事なんて無かった
地味で平凡な私が
こんな短期間で注目を浴びるように
なるんだからさ
さて西崎さんはどんな顔を
してらっしゃるんだろう
今回の事は彼女にとって
予想外の事であろう
まさか自分の駒であった金坂さんが
こんな行動にとるなんて
おかげで可哀想という目が
西崎さんから私に
変わりつつあるんだもんね