第32章 その毒林檎、一口ちょうだい
そっからは、すごく慌ただしかった
医者が大急ぎで来て
蒼先輩に色々聞いたりして
病院から親さんに電話をしてくれたらしい
俺は前城先輩に電話をかけた
今から来るらしい
そういえば用事は大丈夫だったのかな
「蒼!!!」
「おとーさん、おかーさん…」
「もう!!あんたって子は…
心配ばっかり、かけて…」
「ごめんなさい」
肩を震わせながら
蒼先輩の近くに行き、抱きしめる
親さんを見て、また俺まで
泣きそうになった
あぶねぇあぶねぇ
「本当に、よかったなぁ…」
「先生、蒼はすぐに
退院できるんですか?」
「気分も良さそうですし、一度検査して
何も問題なかったら
退院されても大丈夫ですよ。
あぁでも、一応1週間ほど休養を
とった方がいいですね」
「そ、そうっスよ!
いっぱい休んだ方がいいです!」
だって、今学校に来ても
蒼先輩は疲れてしまう
西崎のこともあるし部長たちだって
一体、何をしでかすか…
学年が違うと一緒にいられる時間も
限られてるし、守りきれないかもしれない
「そうだな、蒼。
ゆっくり休むといい」
「学校は大丈夫でしょ?休みなさい」
「はーい。わかりました」
よかった…
トントン、
「あれ、こんな時間に誰か来たのかな。
どーぞー」
「蒼!!」
「みぃちゃん!!」
あ、前城先輩来れたのか
息が乱れているし、きっとこの人も
走って来たんだろう
いつもの余裕が無いように見える
まぁ、そりゃそうか
「よかった、ほんとによかった…!
蒼、待ってたのよ」
「うん、ありがとうみぃちゃん。
心配かけてごめんね?」
「次こんなことになったら
許さないんだからね!もう!」
蒼先輩も前城先輩も
嬉しそうだ
俺だって嬉しい、すごく
今こうやって皆が笑顔なのが
幸せなんだと思う
だから、この笑顔が
もう少し続きますように
いや、続くんだ絶対