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道化師恐怖症。

第30章 わざと掛け違えたボタン




それから溺れていくのは早かった


どんどんエリナに飲み込まれ
エリナにハマっていく


「好きだよ愛してる」


俺の初めての告白で
彼女は顔を真っ赤に染めた

そして、私も、と笑ったんだ



俺の彼女になったエリナだけど
他の奴とも仲良くするのを止めない

それがどうしようもなく腹立たしい

嫉妬はガキくさい
知ってるよ、わらえよ


仕方ないだろ好きなんだから


「ねぇなんで丸井や仁王とばっか
そんなに楽しそうなの」

「え?そんなことないよぉ」

「ふぅん。俺じゃなくてもいいんだ」


きっと、ダサかった
だけど、どうしようもなかった

こんなに可愛いエリナなんだ
誰かに盗られたらと思うと
不安で不安で苦しくなる


けど、俺が卑屈になると


「精市のこと愛してるよぉ」


そう言って唇を合わしてくるから

更に俺は飲まれていく



金坂の事件から少し経ち

如月さんが新しいマネージャーとして
入部してきた


彼女は金坂の被害者だ

けれど、これからエリナに
被害をもたらすかもしれない


地味だけれど女は全員敵だ


そういう気持ちでいないと



けれど何日かは平和だった

練習中、すぐ近くにいるエリナと
見当たらない如月さん


その事を深く見ては
いなかったけど


気がつくべきだった



「...一体如月さんは
何してるのかな」


今日も近くにはエリナしか
見当たらない

俺にはエリナだけでいいけど
まさかサボっていたり...なんて


「精市...相談があるの」


それはもう泣き出しそうな顔で
とてつもない不安が過ぎる


「どうしたの?」

「蒼がね、全然
お仕事をしてくれないの...」


それが辛くて...

顔を覆ると同時に鼻をすする音


きっと、いや絶対
彼女は涙をこぼしてるんだ


大きな瞳から
綺麗な雫が溢れ出て

その温度が頬を伝いながら

肩を震わしている


「そんな最低な奴だったのか。
気づかなくてごめんね」

「ううん。仕方ないでしょ」


そう言って強がる彼女が
愛おしすぎてならない

俯く姿を見なくていいように
ただ抱きしめた


「俺が守るから」


君が笑顔で居られるように


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