第29章 拝啓、透明な君へ
「君の立ち位置も
一度、改めてみて。
そして最後にしてあげるんだ」
「ねぇ待ってってば」
「ダメだよ。
ほら、待ってる人がいるでしょ」
待ってる人?私に?
あ...れ?
「あの人が傍にいれば
きっと蒼は救われる」
「あの人って誰...?」
「わかるよ。大丈夫。
ほら、目を瞑って」
「嫌だ、嫌だ!」
まだ〝私〟に全部を聞いてない
私1人じゃわからないよ
ねぇ、もう少しだけ〝私〟がいてよ
隣じゃなくていいから
少しだけ近くにいてよ
「蒼の中にいるのは
〝私〟じゃないけど
蒼の近くに沢山の人が
いるから安心すればいい」
「やっ...」
「安心して、眠って
ゆっくり休んだら目を開けてあげて」
ほら、...君が待ってるよ
なに?ハッキリ聞こえなかった
もう一回言ってよ
誰?誰の名前を言ったの?
あ...もう、ダメだ
頭の中が混沌して分からない
なんだか、カラフルな
まどろみに落ちていく
何故か、どうしてか
私の胸の中は悲しさや寂しさで
満たされていた