第3章 人気者
初対面の相手ならまだしもさすがに見知った相手を見捨てるわけにもいかず、ため息をついて近づく。
俺には気づいていないのだろう。
無反応の椎名に焦れた男子生徒の一人が、強引に椎名の腕をつかんだ。
さすがの椎名も驚いたのか目を丸くして抵抗の色を見せるが、男の力にかなうはずもない。
「ね、いつも一人で帰っちゃうし、今日くらいいいでしょ?」
子供を諭すように言う男子生徒に、俺は背後から肩を叩いた。
「…………なにやってんだ、お前ら」
振り向いた男子生徒は、俺の顔を見るや表情を強張らせる。
「……荒瀬……燈斗!?」
…………なんで名前知られてんだ俺。
中学時代ならまだしも、高校に入ってからは目立つような行動もしていないし
むしろ毎日屋上で過ごしているぶん空気のような存在じゃないのか。
そんな疑問が頭をよぎるが、今はそれよりも椎名だ。
椎名の手を引くと俺の背後に回らせ、庇うように背に隠す。
「……こいつに何か用か」
「べ、別に……俺らはただ椎名さんをカラオケに誘ってただけだし……な?」
「お、おう」
男子生徒たちはどもりながらもそう答える。
「…………行くのか?」
俺がチラリと首だけ振り返って尋ねると、椎名はフルフルと首を横に振った。
「……だってさ。残念だったな」
俺がそう言うと、男子生徒たちは慌てて去っていく。
背後で椎名がホッと息をついたのがわかった。
「…………ありがとう」
大の男3人に囲まれてさすがに恐かったのか、その表情はまだ強張っている。