第2章 白雪姫
椎名はというとお得意の無表情で多紀の言葉に首をかしげていた。
握られた手を振りほどくわけでもなく、ただされるがままになっている。
そんな椎名を見て多紀は少し意外そうな顔をした。
「へぇ…………。
俺に手を握られて無反応な女の子なんて初めてみた」
「タッキー自分でその発言はどうなの」
呆れたように八尋がツッコみ、やんわりと多紀の手をほどく。
「ごめんね椎名さん。
タッキーはちょっと女癖悪いから気を付けた方がいいよ?」
「失礼な。
大抵は向こうから寄ってくるんだよ」
心外だとばかりに眉を寄せる多紀。
椎名はというとそんな二人の会話をただぼうっと眺めている。
相変わらず何を考えているのか分かりにくい奴だ。
「で、お前ら昼飯は買えたのか」
何か話題を振らないと延々と続きそうな二人の言い合いに、俺はため息をつきながら声をかける。
「あ、うん!
おかかのおにぎり!
さっき買ってなかったみたいだから、燈斗くんのぶんも買ってきたよ」
「いや、俺は…………」
チラリと椎名から貰ったメロンパンを見る。
俺の視線を追ってか、八尋もそれに気づいたようだ。
「それ…………」
「こいつに貰った」
そう言って椎名を流し目で見た。
八尋は一瞬きょとんとした顔をしたが、すぐに満面の笑みになる。
「そっかそっか~。
よかったね、燈斗くん」
「…………は?」
言葉の意味がわからず間抜けな声が出てしまった。
「羨ましいな~。
僕も椎名さんに何か貰いたい」
「…………じゃあ、今度はヤヒロにも何か買ってくる」
へ?
という顔で八尋が固まった。
ずっと黙りこくっていた椎名が喋ったというのもあるのだろうが、何より名前で呼ばれたことに衝撃を受けているのだろう。
数秒硬直し、みるみる八尋の顔が赤くなっていく。
「し、椎名さん!いま名前!なん、なんで?!」
混乱しているのか言っていることがめちゃくちゃだ。
「…………さっき、トートが呼んでた」
「ああ…………なるほど」
だいぶ落ち着いてきたのか、ふぅと息をつきながら納得する八尋。