第6章 ありがとう
「ん…」
ここ、何処だ?
体を起こし、辺りを見渡す。
ホテル…か?
ベッドから抜け出し、カーテンが閉まっている窓へと向かい、間からちらりと外の様子をうかがう。
空は結構明るく、午前9時と言ったところだ。
って、遅刻じゃねぇか。
ベッドに戻り、腰掛ける。
そういえば、隼人は何処だろうか。
この部屋に、人の気配はない。
「っ……」
昨夜の事を思い出し、頭が痛くなった。
体もまだ気持ち悪い。
風呂に入りたい。
でも着替えないし、この服もまた着たくないし…。
隼人、今何処に居るんだ。
「隼人……」
「貴夜、起きたのか」
声がして、ばっと振り向く。
そこには、袋を持った隼人が立っていた。
「隼人、何処に行ってたんだ」
思わず立ち上がる。
「あぁ、家帰って着替え取りに行ってた。どうしたんだ?」
「いや、別に…」
座り、小さくため息をつく。
「てか、何でホテル?」
「あぁ、お前寝ちゃったし、俺もあのまま家に運ぶのは流石に無理だから近くにあったホテルに入ったんだ。空いててよかったよ」
隼人は俺の隣に座り、俺の頭を撫でた。
「体、大丈夫か?」
「…あぁ」
隼人の手の温もりに気持ちよさを覚える。
その手が、少し髪をいじった後、首筋にいった。
優しくなぞられ、少し体が反応する。
「これ…」
「え?」
「キスマーク」
「あ、あぁ…」
横を見ると、隼人は反対の拳をぎゅっと握っていた。