第4章 仲良く…
待ち合わせ時間まであと10分程度。
社長を待たせてはなるまいと思い、早目にマンションを出てきた。
筈だったが、既にクラウスさんの姿がそこにあった。
「クラウスさん!」
俺が声をかけ駆け寄る。
するとクラウスさんはいつもの笑顔で手を振った。
「クラウスさん、まだ待ち合わせの時間まで10分もあるのに…」
「それは僕の台詞でもあるよ。君は、僕が社長だから、待たせてはいけないと思って早く来たんだね?」
「いえ、あの…」
言葉を濁し、俺は思わずうつ向く。
「僕は君に、社長としてではなく、ひとりの男として扱ってほしい」
顔を上げると、彼の優しい目と視線がぶつかった。
クラウスさんは俺の手を取り、軽く口付ける。
「あの、俺女性じゃないですし、いちいちそんなことしなくても…」
「そんなの、この国じゃ関係ないよ。じゃあ行こうか、貴夜」
そう言ってクラウスさんは俺の手を引き、お店へと向かった。