第1章 カナダ
※カナダの人との会話は全部英語です。
※貴夜と隼人の会話は日本語です。
大きなビルが立ち並ぶ街の中心。
沢山の人が行き交っていて、人に酔いそうになる。
「流石カナダだな。広いから迷子になるなよ」
「分かってる」
野木の背を追いながら言う。
分かってるとは言ったものの、正直付いて行くのがやっとだ。
見失わない様に、速足で後を追い掛ける。
そこで、人とぶつかってしまった。
「すいません。……あっ、見失った」
一瞬視線を切っただけなのに。
てか歩くの速すぎるんだよ。
さてどうする?
地図はあいつが持ってるし、行き場はないぞ?
まずここ何処だ。
取りあえず道の横に出て辺りを見渡す。
野木らしき人の姿は見当たらない。
「初日から迷子か……あぁ帰りたい」
携帯を取りだし電話をかけようとしたその時。
「あんた、ひとりかい?」
地元の人らしき男に声をかけられた。
「いえ…その…」
「もしかして迷子?」
「まぁそんなとこです」
男は優しい笑みを浮かべ、俺の肩を抱き寄せる。
「え、え!?」
「じゃあ一緒に探してやるよ。付いて来な」
「ちょ、ちょっと待って!離してください、あと荷物も」
そう言うが男は離そうとせず、俺を無理矢理連れて行く。
嫌な予感しかしない。
「あの、連絡取れるので大丈夫です」
必死にもがくが、男は意にも介していない様だ。
くそ、あいつ何処に居るんだ。
そんなこんなしているうちに、男がある建物の前で立ち止まった。