第99章 【東峰 旭】U&I
そう、昨日俺を避ける様に帰って行くひろかさんの腕を咄嗟に掴んだ俺は、何を思ったのかこんな嘘をついてしまった。
「ひろかさん、俺・・・。俺、ひろかさんの事もう好きじゃないです。・・他に好きな人います」
「えっ・・・?」
「あっ、いや・・その・・」
二人の間に少し気まずい空気が流れ、俺はゆっくり掴んでいた腕を離した。
少しの沈黙の後、そっとひろかさんの方を見るとさっきまでの突き放すような表情ではなく、以前のような優しい表情に変わっていた。
「そうだったんだ!・・なんかごめんね。そうだよね。私ったら自意識過剰だね」
そう言ってひろかさんは少し顔を赤くして頬をかいていた。
「じゃぁ・・お言葉に甘えて送ってもらおうかな?実はちょっと一人で帰るの怖かったんだ」
そう言って申し訳なさそうに笑うひろかさん。
咄嗟についた嘘。
ただ、嘘をついた事で今までの様に自分と接してくれると思うと嘘だったとは言えなかった。