第99章 【東峰 旭】U&I
「あっ!こっち、こっち~」
バスを降りると駅前で一人の女性が手を振っている。
彼女を見つけ、俺はすぐに駆け出した。
「はぁ・・はぁ・・ひろかさん早いですね・・」
「うん!午前中仕事してきたの」
「そっ、そうですか・・」
本当は少し早めに着いて、彼女に待った?と聞かれたら、今来たところ。とスマートに答えるつもりだった。・・と言うか、そうするようにとスガからアドバイスをもらっていた。
初っ端から計画が崩れて俺は乱れた息を整えながら大きくため息をついた。
「さっ、行こう!旭くん!」
「・・はい!」
今日は人生で初めてのデート。
昨日は眠れなかったけど全然眠気は無い。
大きく深呼吸をして先を歩く彼女の隣まで駆け寄った。
彼女は佐藤ひろかさん。
彼女との出会いは数週間前、たまたま乗っていたバスの中。
バスの急ブレーキでバランスを崩し、倒れそうになった彼女を支えたのが始まりだった。