第35章 【月島 蛍】理想の身長差
「・・・何してんのさ、こんなところで」
私は放課後、体育館の外壁に寄りかかりながらアイスを食べていた。
「あっ、月島か。お疲れ~」
私は溶けはじめてきたアイスを食べるのに夢中だった。
「だから、こんなところで何してんの?」
ちょっとイラッとした口調で聞き返してくる彼。
別にアイス食べてただけなんだけど。
でもそう言ったらまたイラっとさせるかもしれないので、精一杯のこじ付けの理由を口にした。
「んー、私なりの青春?」
「・・・は?」
ダメだったか。彼には通用しなかった。
「食べる?」
なんとか話を逸らそうとアイスを渡したが、いらないよ。と言われたので、また自分の口に持って行った。
「私、部活とかもやってないから、全然青春してないなって思って」
「ここに居ても青春感じないデショ」
私はあはは。と笑って、最後の一口を口に含んだ。
「これで彼氏でもいたら青春感じるのかな?」
私は口内で液体化したアイスを飲みこんだ。
「・・・どんな奴がタイプな訳?」
彼が私の隣に立って、そう聞くから考え込んでしまった。
特に今好きな人がいるわけでもない。
「そうだな…。バレー部で言ったら・・・影山?」
「はぁ?なんで王様?」
月島はまた私に理由を求めてくる。
「影山って身長高いよね?180センチくらいだよね?」
私が右手で影山の大体の身長の高さを表した。
「は?なんで王様より高身長の僕じゃないわけ?」
月島はまだ納得がいっていない様子。
でも今度こそは納得のいく理由があった。
「男女の理想の身長差って15センチって言うじゃん?月島は高すぎる。キスするの大変そう。首疲れちゃう!」
私は月島の正面に立って、背伸びをして顔を近づける。でも全く届かないけど。
「ほらね?」
私はまた壁に寄りかかった。
「はぁ、青春したいなー」
「すればいいデショ、青春」
その言葉と同時に月島の顔で視界を遮られ、唇には生暖かい物が触れた。
「僕が屈めばいいんデショ?ってか、その理想の身長差って誰が決めたわけ?」
「おぉーい、月島!休憩終わりだぞ~」
彼は部員に呼ばれ、じゃ。と言って部活に戻って行った。
私は彼が残した唇に残る湿り気を触った。
「あれ?私今、青春真っ只中かも…」
TheEnd
あとがき有