第1章 プロローグ
訪ねて来たのはブレザーを着た、
いかにも高校生らしき青年
フワッと優しげな笑みを浮かべ、彼は
そっと1枚の紙を差し出した。
「母さんがこれを渡せって」
そこに書かれていたのは、
【ちゃんへ
久しぶり、なのに手紙でごめんね
実は長期海外出張が決まっちゃってね、
家を留守にすることになったの
子どもだけじゃ不安だから
貴女に母親代理を頼みたくて。
私が戻るまで、お願いします
P.S
困った事あったら智に聞いてね
咲和より】
咲和というのは、私の知り合い。
ここの事務所を紹介してくれたのも彼女。
だけど子ども達の母親代理って…
私、まだ二十歳だよ
子どもらと年変わんないんじゃ…
「俺、智って言います。
下に四人、弟が居るけど」
「よ、よ、四人!?」
「うん。四人」
またフワッと優しげな笑み。
彼は愛想は良いみたいだ。
常にニコニコ笑ってる
『まあ、良いじゃないの
卒業するまでの間、って言ってたし』
「え、」
言ってたし、って知らないし!!
『先日ね、来たのよ。
とっても美人な方ね〜、モデルさんかしら』
「し、知りません…
けど、咲和さんの頼みなら…。」
長期海外出張なんて、大変な仕事なのかな
それに、母親代理を頼むってことは
お父さんなんか居ないって事なのかもしれない
女手一つで育てるって、大変なんだよね…
「ありがとうございます。
母の部屋を好きに使えって、言ってました
荷物なども届いてますので。
では、また明日、迎えに来ます」
智くんはそう言って出て行った。
てか、荷物送るの早いし
明日って色々準備とかあるでしょうに!
『じゃあ、頑張ってね
仕事の方は他の子で回すから』
「すみません、お願いします」
『でも、まあ長男坊、イケメンね〜!』
「…そこですか」