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RICHIESTA

第2章 いせかいにようこそ


わたしが部屋に行くとリモーネは遅かったな、と声を掛けてきた。
時間が掛かってしまった理由を伝え、彼女の住処に着いたら読み書きを習うという約束を取り付ける。

『んー、記憶喪失の弊害なのかなぁ』

わたしの呟きにリモーネは己の推測を話してくれた。

「記憶喪失といってもサキの場合は恐らく逆向性健忘だろう。これはある瞬間より前の記憶が失われる状態を指す。自身の名前を覚えているなら部分健忘にあたるが、それ以外の記憶が抜け落ちていることから限りなく全健忘に近いと思う」

ああ、難しい話だ。

「ただ、自分が読み書きをできると判断していたことから、元々の識字能力はあったのではないかと推測できる。だが、この国で使用されている文字を理解できないとすると、他の大陸から来たのかも知れない。身体的な外傷は見受けられないから此処に来るまでに何らかの強いストレスを感じ、それが原因で記憶を失ったのではないかと考えられるんだが」

どうしよう、難しいし長いから最初の方の内容忘れた。なんだっけ、ケン……ケンボー?
最早サキは話に着いていけず目が死んでいる。
それに気付いたリモーネは簡単に纏めてくれた。

「つまり、サキは此処じゃない別の大陸からこの大陸に来る途中、若しくは到着してから何か強いショックを受けて記憶が飛んだ可能性が高いってことだ」

なるほど、それなら理解できる。

『うーん……覚えてないから原因も解りません』

そう言うとリモーネは少し思案し、まあそのうち思い出すだろうと返してくれた。

「そうだな、記憶が戻るきっかけになるかも知れないからこの大陸や世界のことを話しておこう」

それから、女将さんが夕食の時間だと呼びに来るまでの間にリモーネは様々なことを解りやすく噛み砕いて説明してくれた。


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