第18章 歳の壁 佐助
「いつまでそうやってるの?」
そういって佐助は私の手を握る。
別に、私だって意識的にこうしてるわけじゃないわよ?
「わからないわ」
年下の彼、佐助は私に撫でられるのが嫌いみたい。
でもやめられないし、無意識のうちに私の右手は佐助の髪をふわふわと遊んでいる。
「いい加減にしてよ」
「いいじゃない」
確かに佐助には嫌われたくない。でもこうしているのが私にとって大切な休息の一つ。もう呼吸と同じように当たり前になっているのよ、今更止めようだなんて思わないの。
佐助はまた深いため息をついて文庫本を読み進めていく。
「…ねぇ」
「ん?」
「子ども扱いしてる?」
「違うわ」
えぇ、本当よ
私は一度たりとも佐助を子ども扱いしたことなんてない。ちゃんと最初からあなたを一人の男性として見ているの。
でもこうしていると、あなたは気になるのよね。私との4歳という薄くて小さな壁が。
そんなことわかってる、でもなぜかしら。
そうやって嫌がっているあなたの顔は嫌いじゃないの。
「…俺さ」
「うん」
「はやくさんみたいな大人になりたいな」
「あら、急がなくたって十分佐助は大人よ」
佐助はまたため息をつく。
こうやって、佐助がため息をつく姿だってとても絵になっているのをきっとあなたは知らないのでしょうね。
そんな佐助は私が働いている会社のどの上司よりどの後輩よりどの同期よりも魅力で美しいのよ。
「…まぁ、いいか」
「いいんじゃない?」
でもやはり、大人しく撫でられている佐助が一番、とても愛おしいわ
END