第1章 百日紅の夢
薄暗い部屋。
蝋の燃える音、匂い。
大きく、小さく揺れる、影。
「…いい加減素直になれ」
「~~っですから、私はこんな事をする為にこちらに来た訳ではないので…っ!!」
頭の上で縛られた腕がギリギリと痛い。
リヴァイ兵長の給仕だけだと聞いていたのに何故私は縛られなくてはならないのだろうか。
確かに給仕だけにしては恐ろしくよい値段ではあったけれど処女を捧げなくてはならないなんて聞いていない。
それにはじめてを渡す、という事を抜きにしても“そういうこと”をするにはいささか安い金額だ。
(それでもこの金額を真っ当に稼ぐのは中々な額ではあるけれど)
そっと心の中でつぶやいてその考えを振り払う。
やっぱりこんなところではじめてを奪われるなんて嫌だ。
「目を瞑っていればすぐに済む。無駄な抵抗をしてオレに無駄な時間を取らせるな」
「いやいやいや無理ですってば!私そんなこと聞いてませんし出来ません!」
ベットに粗雑に転がされ、上着の胸紐に兵長のすらりとした指が掛かる。
ハイウエストのワンピースタイプで胸元を革紐で編み上げた制服だ。
もちろん胸紐を外されてしまえば全てが丸見えになってしまう。
たかが給仕にしては可愛過ぎる制服だと思っていたけど…!
蝋が燃えるジジジ…という音がやけに耳に障る。
その不快な音に重ねて質の良い木綿の服と革紐のこすれる音がする。
何とか身をよじって逃げようとするけれど、がっちり上から押さえつけられていて動けない。
「もう良い。黙れ」
低い声で制され、胸紐が全て抜き取られた。
紐で支えられていた布がハラリと開き、誰にも見せたことの無い素肌が露わになる。
「…無駄にデカイな」
「しみじみ見ないでよ!―――――っぁぅ!!」
鎖骨を触れるか触れないかの微妙なタッチでなぞられて、全身が粟立つ。