第9章 別々の道
行為が終わり、うつ伏せのまま動かない私にユウトは言う。
「ごめんね、美月ちゃん。
俺…練習だとか言って、君の身体、弄んでたんだ」
私は顔を上げ、涙を流したままで言う。
「それでも!
それでも…私はユウトが好…んっ」
好きだと言いかけた口を、ユウトに手で塞がれる。
ユウトは苦しそうな顔をしていた。
「俺は…打ちきりだって聞いて、本当は喜んでたんだ。
君が簡単に夢を掴んだようで…ずっと羨ましかった。
君といると苦しい。
夢に向かって真っ直ぐな君を見てると、俺は、どうしても自分が情けなくて仕方なくなるんだ。
もう、会えない…」
私は何も言えなくなった…。
いつも笑顔で私を励ましてくれていた
ユウト。
本当はオーディションに落ちたり、レッスンで厳しいことを言われたりして、自分も苦しかったはず。
私はそんなこと、全然気が付かなかった。
ユウトが二人のスマホを持ち、お互いの連絡先を消去する。
そして、服を着て出ていく…。
その間も、私はただ、ユウトを見つめて動けなかった。
「バイバイ、美月ちゃん。」