第11章 エピローグ
それは、まぎれもなく僕の初恋だった。
今までに、本の登場人物に恋心のようなものを抱いたことはある。
でも、そんなものとは全然違う。
新しい世界。
それは、美しく華やかで優しい世界だった。
僕はこんなに冴えない男なのに、僕の好きな人は明るく美しい。
彼女のことを想うだけで、僕の周りの小さな空気も変わるようだった。
彼女は僕に話しかけてくれる。
僕に笑いかけてくれる。
僕が彼女と同じ、体育祭の実行委員に立候補したからだ。
僕が自分から周りのために何かやろうなんて、一生でこれが最初で最後かもしれない。
でも僕はそんな自分を変えてでも、一生の思い出が欲しかった。
初恋の人と少しでも何かしたかった。
……
僕は調子にのって、もっと大きな思い出を作ろうと思った。
体育祭が終わったら、彼女に告白しよう。
振られるだろう。
彼女が付き合うのは、同じバスケ部のさわやかイケメンとかだろう。
実際、とても仲良くしてるし。
でも、僕の最初の失恋の相手が彼女だなんて想像しただけでしびれる。
体育祭が終わった後、2人きりになれるように誘って…。
……
そのときのことは、正直あまり覚えていない。
適当な理由をつけて、僕はその場から逃げ出した。
男子トイレの個室で、僕は吐いた。
なぜだろう。
僕は泣いた。
……
決めた。
僕のものにしよう。
明るすぎて、まぶしくて、そばにいられないなら、
その明るさを落としてしまえばいい。
僕は変われない
なら、彼女を変えるしかない