第8章 えっと、ごめん
次の日の放課後。藍田くん家。
「みなみ、今日も一人でお弁当食べてたね」
「うん」
「いじめられてるの?」
「別に。藍田くんも一人でお昼食べてるでしょ。いじめられてるの?」
「いや、別に」
「ふふっ」
私は並んで座ってる彼の手を握る。
「甘えてもいい?」
彼に尋ねる。
「いいよ」
彼は答える。
私は彼の肩にもたれる。
観覧車に乗ったときに教えてもらった。
気持ちいいよって。
本当に気持ちいいね。
彼が私の髪をなでなでしてくれる。
私は目を閉じてその感覚にうっとりする。
「バスケ部やめて何かやる?」
彼が尋ねる。
「ううん。特にやりたいことないし。あっそうだ。勉強でもしようかな」
「ふふ。それはいいね」
「たまに勉強教えてくれる?」
「いいよ。いつでも」
…
藍田くんに
「休み時間に読む本貸して」
って頼んだら、彼は少し考えて『鬼平犯科帳』の文庫本を出してくれた。
「ちょっと! 女子高生にこれ勧める? 普通」
私はウケる。
「女子高生だからこれがいいんだよ。現実の人間関係に疲れたときは、現実の自分からかけ離れた物語がいいよ」
彼は言った。
そんなもんかな。