第7章 僕には似合うね
3学期が始まった。
私は特に変わらない毎日を送ってる。
「鈴原さん」
学校から駅までの帰り道を歩いていると、後ろから声をかけられる。
立ち止まって振り向くと彼が駆け寄ってきた。
「あぁ…藍田くん」
彼はニコニコして尋ねる。
「今日、部活ないの?」
「んー…今日体調悪いから休んだ」
私たちは話しながら並んで歩く。
「大丈夫? 風邪?」
「ううん」
「どうしたの?」
「……」
「あっ、生理?」
「…バッカじゃない」
「どうして? 違うの?」
「普通そういうこと言わないでしょ…」
「あっそうか。そうなんだ。なるほど。うん、わかった」
彼は納得した様子で頷く。
「…ていうか、人に見られますよ?」
「えっ?」
私の問いかけに彼が「なんのこと?」って顔をする。ムカつく。
「テスト前、人に見られるからってバラバラに帰ったんじゃないの?」
「あぁ…。まあでも一緒に実行委員もやったんだし、方向も同じだし、別に一緒に歩いてても不自然じゃないんじゃないかな?」
彼がにっこり微笑む。
「…設定ブレブレじゃない? 大丈夫?」
「人間関係っていうのは揺らぎがあるものだよ」
「意味わかんない」
「ふふっ、みなみのそういうとこ好きだよ」
「バーカ」
…
電車は空いてるので隣り合って座る。
「家、寄って行かない?」
彼に尋ねられる。
「行かない」
「どうして? 変なことしないよ。生理だから」
「部活サボって寄り道してるの、人に見られたら困る」
「そっか。そうだね。寂しいけど仕方ないな」
「……」
しばらく黙る。
生理だから、ややこしい人とペラペラしゃべりたくない。
彼が口を開く。
「みなみ。みなみは僕のどこが好き?」
「…忘れた」
「そっか」
…
「じゃあね。バイバイ」
「バイバイ」
ひとつ手前の駅で彼は降りてった。