第4章 一生、忘れない
「お邪魔します…」
彼の家の玄関で私は挨拶する。
「誰もいないよ。あがって」
彼が答える。
彼の部屋に入る。
「結構、綺麗だね。部屋」
「うん。みなみに来てもらいたくて片付けたんだ」
私の感想に彼が嬉しそうに答える。
「嬉しいな…。みなみが僕の部屋に来てくれるなんて…」
彼は鞄を床に落として、私を抱きしめる。
「ちょっ…ちょっと…勉強…しにきたんだけど…」
私はちょっと焦る。
「そうだった。ふふ…」
彼は身体を離して悪戯っぽく微笑む。
…
彼が勉強を教えてくれる。
確かに一人でするより楽しい。
「二人ですると勉強も楽しいよね」
彼が私の顔を見てニコニコ笑う。
「うん」
私もちょっと笑う。
「笑顔が可愛いね。みなみ」
彼は頬杖をついて私の顔を眺める。
「え…」
急にそんなこと言われても、私は何も返せない。
「みなみって…少年漫画のヒロインみたいだ。
笑顔が可愛くて、スタイル良くて…バスケ部のエースと喧嘩しながら仲良くなるマネージャーみたいな…ね?」
彼が語る。
「えー…? そんなふうに見えるの?」
「うん。でも…小説のヒロインには少し影が足りないかな…」
彼は意味ありげに私の目を見つめる。
すごく…恥ずかしいけど、なんとなく目をそらせない。