第3章 君の泣き顔、好きだよ
文化祭当日。
衣装係の私は、当日はそれほど忙しくない。
体育館の後ろの方で私たちは自分のクラスの劇を眺める。
「おっ、出た。うちの王子」
「カッコイイじゃん、川口くん。馬子にも衣装だね」
「えーでも、川口くんって割と普通にかっこよくない? ね、みなみって部活も一緒だよね」
「うん。バスケも上手いよ。女子バスの中でもそこそこ人気あるかも」
「へーそうなんだ」
好き勝手にコソコソおしゃべりしながら観劇する。
…
「鈴原、ちょっといい?」
教室で文化祭の片付けしてるとき、川口くんが私を呼ぶ。
私は川口くんに連れられて廊下に出る。
「えっと…鈴原…」
「うん?」
川口くんはそわそわキョロキョロしながら周りを伺う。
「鈴原、付き合ってる人いるの?」
「え…?」
「彼氏とか…」
「あ…えっと…」
予想外の質問をされたことと、藍田くんのことが頭をよぎって少し混乱する。
「いないよ」
私は答える。
川口くんは少しニコッと笑う。
そして言う。
「じゃあ俺と付き合って」
「……」
それは…できない…。
「ごめん」
私は答える。
「え…ええっ? 返事早っ」
川口くんは笑いながら言う。
私もちょっと笑っちゃう。
「好きな人とかいるの?」
「うん」
川口くんの質問に私は頷く。
「そっか…。男バス?」
「ううん」
私は首を振る。
「そっか…」
「……」
ちょっと沈黙…。
「うん、わかった。急にごめんな」
川口くんが笑顔で立ち去る。
「ううん」
私もちょっと笑顔で見送る。