第3章 君の泣き顔、好きだよ
「もしもし」
『あ、もしもし、鈴原さん?』
「そうだよ」
『いま、大丈夫?』
「大丈夫だよ」
『宿題は? やった?』
「うん。宿題もやったし、お風呂も入ったよ。後は寝るだけ」
『そうなんだ。えらいね。僕もだよ。電話をかけるのが楽しみで。そういえば、電話で話すの初めてだね』
「え…そういえば、そっか。初めてだね」
『なんだか可愛らしいね。電話で聞く鈴原さんの声』
「……」
『あれ? もしもし?』
「…聞こえてる。そんなこと言われたらしゃべりにくい」
『あはは。ますます可愛い』
「もう…」
『ねぇ…みなみって呼んでいい?』
「……」
『だめ…?』
「いいよ…」
『やった。みなみ、デートどこ行きたい』
「うーん…。デートっていったらやっぱり遊園地か映画…とか?」
『なるほど。うん、初デートは遊園地にしよう。みなみには遊園地が似合う』
「そう…なの?」
『そうだよ。詳細はまた連絡するね。いろいろ調べてみる』
「うん」
『じゃあ、今日はもう遅いから寝ようか。また明日ね』
「うん、また明日…」
『……』
「あれ? 切るの?」
『ん? どうしたの? 寂しい?』
「ん…そうじゃなくて…。おやすみ」
『あっ、そうだ! あはは…。うん、ありがとう。みなみ、おやすみ』