第2章 一山いくらの林檎 後
言うか言うまいか悩んで、あたしの口が震えた。
「牛尾。」
「ん?なんだい?」
「プレゼント、さ。」
少し開いた唇は留まる事を知らない。
「体でお返しする?」
あたしの挑発的な発言に、あたしの頭を撫でていた牛尾の手が止まった。
すごく腹立たしかった。
牛尾が思わせぶりな態度を示す事も。
あたしなんかと一緒にいる事も。
本心を見せてくれない事も。
いっそ押し倒された方が気持ちがよかった。
いつも完璧な牛尾の、自己中心的で汚くて粗野で乱暴な一面が見られたらどれだけ良かった事か。
そんな気も起こらないぐらいあたしに魅力が無いなら、思わせぶりな態度なんてとらないでよ。
あたしなんかに優しくしないで。理解出来ない。
どこまでも完璧で、あたしとの差を見せつけて、あたしに惨めな思いをさせて、でもあたしへの対応も完璧だから文句も言えない。
あんたはあたしをどうしたいの?
あんたには人間的な欠点が無いの?
あんたには「こうしたい」っていう我侭さえ無いの?
牛尾にとってあたしは、素直になれない程度の存在でしかなかったの?