第20章 牢獄
「陛下からの手紙か……今度は一体何が」
「坊ちゃん」
「どうかしたか?」
「いえ……ただ、今回の事件。私に力を奮わせて頂きたく思います」
「お前は十分、常に尽力しているとは思うが?」
「何をご冗談を。やり残した過去の残骸の、払拭を……」
「勝手にしろ」
封を切り、シエルは内容に目を通す。セバスチャンがあれほどにまで、前に出ることも珍しい。彼にそこまでさせる女王陛下の憂いとはどんなものなのか?
「……堕天使の残骸。その処理が今回の命だ」
「はい」
「女王はこの哀れな堕天使が、無残な姿で尚生き続けていることにたいして、憂いておられる。解放を、とのことだ」
「この件に関して、私一人で処理させて頂けませんか? 坊ちゃんの忠実な犬として、坊ちゃんの手を煩わせるわけには参りません」
「いいだろう。見事解決してみせろ、命令だ」
「イエス・マイロード」
セバスチャンは深く会釈し、シエルの部屋を後にした。
「さて……行くとしますか」
漆黒の闇が足元を黒く染める。その足跡に気付いているのか、いないのか……アリスもまた、屋敷に届いた女王陛下の命が書かれた手紙を読んでいた。
「エンジェル……ドラッグ」
くしゃりと音を立て、手紙は原型を崩す。沸々と湧き上がる怒りを胸の内に感じながら、アリスは外出の準備を始める。