第20章 牢獄
「まぁた甘い物作ってる」
「これはこれは、グレイ伯爵。いつになったら玄関からいらして頂けるのでしょう?」
厨房でシエルの為にケーキを焼いていたセバスチャンは、前触れなく窓から現れたグレイにため息交じりに言い放った。相変わらず彼は、テーブルの上に用意されていたシュークリームを一つつまみ食いしていた。
「グレイ伯爵……お行儀が悪いですよ」
「ボクに指図しないでくれる?」
グレイは指先についたクリームも綺麗に舐め取ると、懐から封筒を取り出しセバスチャンへと差し出した。
「これは?」
「陛下から。なんでも、最近妙なドラッグが流行ってるらしいよ」
「ドラッグ……?」
「エンジェルドラッグ」
セバスチャンの目の色が一瞬変わった。その反応でさえも楽しいのか、グレイは笑いながら話し始める。