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黒執事 Blood and a doll

第17章 幻想



「な……何して……っ」

「貴方は、私以外の悪魔を傍らに置いて現れた。私ではない悪魔に、笑いかけて」

「……だからどうしたっていうの?」

「アリス」

「っ……!」


 気付いた時には、アリスの身体は押し倒され、白薔薇の海に沈む。花びらは宙を舞い、彼女の目の前にはセバスチャンの顔と夜空と月と、花びらだけ。


「今ここで、貴女にお話ししたいことの本題でもすると致しましょう」


 彼の瞳が、悪魔の瞳を覗かせた時、無意識にアリスの身体に力が入る。


「嫌なんですよ、私は。所有していたものに、触れられるのが」

「ん……っ」


 彼の生暖かい舌が、アリスの首筋を這う。ねっとりと、味わうように。羞恥心から、抵抗しようとするアリスを力で彼はねじ伏せてしまう。


「どうして、貴方こそ私という悪魔に裏切られておきながら、また悪魔と契約などという愚かなことをしているのです」

「それは……な、成り行きよ」

「成り行き? 是非、お聞きしたいものですね」

「セバスチャン……っ!!」


 首筋を伝って、鎖骨を舐め上げられアリスは顔を背ける。その反応でさえ、彼の心を躍らせる材料となる。いつの間にか、恥ずかしさで肌寒さも失せるほどにアリスの身体は熱を持ち始める。


「や、やめて!!」

「……貴女を大事にすることでさえ、難しい」

「え……?」


 顔を上げたセバスチャンは、赤い瞳を覗かせてアリスを射抜く。視線を縫い止められたかのように、逸らせない。逸らすことなど、許されない。

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