第76章 過去と今の差し替え
「……そっちのミケは、
悉く自由で最低じゃないか……」
「実際どうなのかは分かんないけどね。
ちゃんと話もせず一方的に別れたし。」
「それでも浮気は本当だったんだろう?」
「……私がこの目で現場を目撃してるから。
さすがに言い逃れは難しいと思う。」
ミケはあからさまに大きなため息を吐き、
ベッドに腰を掛けた。
「そっちの俺は最低なヤツだ。
もうそれ以外言葉もない。」
「もうそっちの俺
って言っちゃってるじゃん。」
つい笑いが込み上げ、肩が震える。
「そうだろう?
そんなに行動も発言も似ていて、
俺と繋がっていないはずはないと
思い始めてきた。」
「それならミケに、
その最低な罪を償ってもらわないとね。」
笑いながら、冗談めかして言った発言の直後、
唐突に腕を引かれ、ミケの横に腰を下ろした。
「そうだな。俺が償おう。」
「……ミケ?」
「また出会った時からやり直せばいい。
今度は……“こっちのミケ”は、
絶対間違いは起こさない。」
真剣な瞳に吸い寄せられるように、
そっと近付いた唇を自然に受け入れていた。