第59章 もしもその時が来たとしたら
モブリットの走らせる馬に一緒に乗り、
ウォール・ローゼ南方面駐屯の
訓練兵団基地に辿り着く。
人里離れたところではあるが、
建物が特に老朽化しているとか、
清潔感が欠けているとか、
そういうことはなく、
結構な人数を収容できそうな平屋の丸太小屋が
ドンと佇んでいた。
「この時間にジャンの知り合いってだけで
女性が訪ねてくると、
色々問題になりそうだから、
凛はジャンの親戚で急な託があって
来たことするけどいい?」
「大丈夫。」
「教官に話を付けて来るから、
ちょっとそこで待ってて。」
丸太小屋の、入り口から死角になりそうな位置で
モブリットの帰りを待つ。
暫くすると、小屋の中からジャンが出て来た。
「……親戚って……何で凛が……」
「急にごめんね。」
目を丸くしているジャンに謝りつつ、
小屋から少し離れた位置にある
簡易ベンチに腰を掛けた。