第151章 変わらぬ想い
「デリア?」
「こんな時間にすみません……」
肩を叩いた人物は、新兵のデリアだった。
深々と頭を下げる彼女を見下ろしながら、風呂上がり特有の石鹸の匂いを感じる。
彼女も湯浴みを終えたばかりなのだろう。
「あのですね…モブリットさんに、借りたい本がありまして……」
「ああ、そうなんだ。
本のタイトルを言ってくれたら持って来るよ。」
「……それがタイトルは覚えてなくて……
でも表紙を見たら思い出すと思うんですが……」
なるほど。
俺の部屋に入って本を探す必要がある、ということか。
……だけど、この時間帯に女性を部屋に入れるのに抵抗がないわけでは無い。
いくら自分を兄のように慕ってくれている女性だとしても、この現場を誰かに見られて、事実無根の噂が立つのは面倒だ。
これは明日の日中に出直してもらってもいい案件なんじゃないだろうか。
「あの…どうしても今夜読みたくて!!
本を見つけたらすぐ女子寮に戻るので!!」
こっちの感情を読み取られていたような発言に、つい呆気にとられる。
デリアがここまで引き下がらないということは、本当に今晩読みたい本なのだろうか。
周囲を見渡し、誰も人がいないことを確認する。
「分かった。
部屋、そんなに片付いてないけどいいかな?」
本を探すくらいなら問題ない散らかり方だとは思うけど、と言い切るより先に、ありがとうございます!と勢いよく頭を下げるデリアを部屋へ入れた。