第127章 動揺の日
「……モブリット、相変わらずモテるね。」
「デリアのこと?」
デリアが去ったのを確認し、
小さく息を漏らしてしまう。
「デリアはそんなのじゃないよ。
兄がいるって言ってたから、
俺に重ねてる部分はあるかも知れないけど。」
普通、兄貴相手に
あんな艶っぽい視線は向けませんよ?
相変わらずの鈍さだ。
だけどそんなところが
尚更いいと思う気持ちも分かる。
少女漫画の主人公と同じ原理だろう。
大体が鈍感で自然にモテる。
「モブリットがそう思うなら、
そういうことにしとくよ。」
明らかな好意を剥き出していたデリアだって、
他人に口出しされるのは嫌だろう。
これ以上私が口を挟むのも野暮だ。
そもそも私の目的は、
モブリットにバインダーを渡し、
午前の訓練の様子を報告することだった。
モブリットにバインダーを差し出したと同時に
顔を覗き込まれ、
必然的にモブリットと視線が重なる。
「……やきもち?」
「………だとしたら?」
思わず問い返すと、
モブリットの頬は一気に緩んだ。