第125章 ●当たり前のようにそこにいて
「二人に悪いから、
印は付けないようにしたいんだが、
今日は残したくて仕方がない。」
「……そもそもエルヴィンって
キスマーク付けたことあるの?」
「ない。」
あまりにも早すぎる即答に、
思わず吹き出してしまう。
「だと思った。」
「なぜ?」
「独占欲、
あんまり湧いたことなさそうだったから。」
「……そうか。
君を自分の側に繋ぎ留めておきたいから、
こんなに痕を残したくなるんだな。」
エルヴィンはそう言うと、
そっと私の手を取った。
「ここなら、気付かれないかな。」
濡れた唇の感触が、手のひらの一部だけを
集中的に熱くさせる。
親指の付け根の膨らみに密着した唇は、
時間をかけ、何度もその部分だけに
丁寧で吸い付くようなキスを落とす。
エルヴィンが目を瞑ってそうしている姿を
見ているだけで、身体は疼き、
どうしようもない情動がエルヴィンの頬を
いやらしく撫でた。