第106章 嫉妬の細波
「取り敢えず、
連絡するのは俺に任せてくれていいから、
モブリットたちは
ホテル探しを急いだ方がいい。」
「今日、何かあったの?」
「この近くでウォール教の
大規模な集会があったからな。
あの大所帯だ。
多分そのまま宿泊する教徒も多いだろうし、
あっという間に部屋なんか埋まるぞ。」
「……マズイな。」
モブリットは小さくため息を吐いて
すぐ立ち上がった。
「イアン、すまない。連絡は頼むよ。」
「ああ。どうせついでだから気にするな。」
モブリットはジャンについての情報や、
連絡事項を素早くイアンに伝え、
私はその間に会計を済ませて、
出発する準備をする。
「……あー、ほんとに急がないと
マズイ気がしてきた。」
ふと窓の外を見て呟いた私の声に反応して、
イアンが横に並ぶ。
「本当だな。降り出したら厄介だぞ。」
イアンは今にも泣き出しそうな
厚く濁った灰色の雲を見つめた。