第1章 プロローグ
光、白、風。
鼻を突く独特の匂いはどこかで嗅いだことがあるような気がする。
ここはどこ……?
規則正しい機械音。
何の音だろう。
分からない、だけど心地良い。
『………』
ふと窓辺に目をやるとよく晴れた空に大きな入道雲が浮かんでいた。
フワフワで、真っ白な。
どうしてだろう。
涙が溢れて止まらない。
“泣くんじゃねェよ”
何処からか聞こえた声。
彷徨わせる視線。
誰もいない。
この部屋には私だけ。
幽霊かな。
それもいいかもしれない。
ぼんやりとした考えが浮かんでは消えてを繰り返していく。
未だ止まらない涙。
何か、大切な事を忘れている気がする。
でもそれが何なのか。
私にはどうしても
思い出すことが出来なくてー……