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心の宝

第1章 転校生


僕らの心の中には、「思い出」という宝が沢山眠っている。
その宝には、辛いもの、苦しいものもあれば、楽しいもの、嬉しいものもある。
今回は、僕のとっておきの思い出を紹介するー。

あれは、僕が小6の時の話だ。
僕ら、6年1組は男女仲が悪く、男女の中でもグループができていて、クラス全員で遊ぶなんてことは絶対になかった。

だけど、僕的には仲良くなってほしいという気持ちの方が強かった。まあ、無理だと思うけど。

そんなある日、6年1組に転校生が来るという噂が流れ始めた。どうやら、大阪から、女の子が越して来たらしい。

次の日の朝、転校生の噂で持ち切りの教室に先生と、1人の女の子が入ってくる。一瞬しんと静まり返った教室が活気に満ち溢れた。

「みなさん。静かにしてください。今日は転校生を紹介します。大阪から来た、藤堂杏奈ちゃんです。みんな仲良くしてください。」

先生がそう言うと、

「大阪から来た、杏奈です。みんな、仲良くしてな。」

教室がざわめき始めた。関西弁が珍しいのだろう。

「えっと、杏奈ちゃんの席は、光輝君の隣ね。」

杏奈ちゃんは、僕の隣の席に座ると、こちらを向いて、ニコッと微笑むと、

「光輝君、よろしくなぁ。」

と、言ってきた。

多分その時の僕の顔は真っ赤だったと思う…。

その日の昼休み、杏奈ちゃんの周りには、みんなが集まっていた。
女1「杏奈ちゃん!男子となんて話さずに私たちと遊びましょ。」

男1「ふんっ。誰が女子となんか話すか!」

僕はそれを自分の席で見ていた。元から僕は1人が好きだったから、休み時間には読書していることが多かった。

チラッと杏奈ちゃんの方を見ると、杏奈ちゃんと目が合った。

すると、杏奈ちゃんは自分の席からすくっと立ち上がって、

「みんなごめんなぁ。ウチ、光輝君に校舎の案内してもらう約束しとるんさ。ちょっと行ってくるなぁ。光輝君、ほな、行こか。」

ばっと手を掴まれ、廊下に出て、屋上まで一気に駆け上がる。

はぁ、はぁ。

全速力で階段を駆け上がったから、2人とも息が切れている。

「あ、杏奈ちゃん。僕、約束なんてしたっけ?」

杏奈ちゃんはこっちを振り向くと、

「光輝君!ごめんなぁ!あの軍団に囲まれとるのが耐えられんくて。光輝君まで巻き込んでしまったなぁ。ほんまごめんなぁ。」
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