第20章 story19“決意の先に待っているもの”
翌日の早朝、彩芽は幸村の部屋の前を行ったり来たり…部屋の主にどう声を掛ければ良いか迷っていた。
(…ど、どうしよう)
勢いでここまで来たものの、実際に部屋の前まで来た途端、ふと我に返ってしまったのだ。
「…やっぱり帰ろう、まだ幸村も寝てる筈だし」
くるりと向きを変え自室へ戻ろうとした時、突然手首を掴まれ後ろにひっぱられた。
「きゃ……っ」
部屋に引き込まれ、静かに戸が閉まる。
「ゆ、幸…!!」
「し……」
彩芽の唇に指をあて、声を制す。
「まだ…朝も早いですから、お静かに」
「……ごめんなさい」
着流し姿の幸村を久しぶりに見た。
衿元から覗く逞しい素肌に思わず目を逸らしてしまう。
「こんなに早く…どうしたんですか?」
「ごめん、ね…っまた後で改めて来るねっ///」
幸村の問いに答えず立ち上がろうとする彩芽の腕を掴み、幸村は自分の方へと引き寄せた。
「ずっと…部屋の前にいて…ようやく掴まえたのに、簡単に帰せませんよ」
「う……」
困った顔をする彩芽を見て幸村はクスリと笑う。
「…彩芽殿は何故私に会いに来てくれたのですか?」
そんな風に真っ直ぐに見つめられたらもう逃げられない。
彩芽は立ち上がる事を諦め、幸村に背を向ける形で膝を抱えて座る。
そしてそのまま、ポツポツと言葉を繋いで話し出した。
「あの…あのね、幸村…///」
「はい」
そんな彩芽の様子を幸村は温かく見つめる。
「前に…あの、話してくれた…返事を///しにきたの…」
「彩芽殿…」
後ろ姿を見てるだけでも分かる。
勇気を出してここまで来てくれた事、勇気を出して話そうとしてくれてる事。
(…耳が真っ赤だな)
愛しくて、愛しくて堪らない。
「幸村…私、幸村が……好きだよ」
「…………」
もう二度と離さない、そんな気持ちを伝えるかの様に幸村は強く強く彩芽を抱き締めた。