第20章 story19“決意の先に待っているもの”
気持ちがはっきりした今、彩芽は想いを幸村に伝えたい一心だった。
それと同時に、もう一人答えを出さなければならない人もいる事に心が痛んでいた。
「………」
幸村の所へ行く前に鍛練場へと向かう。
あんなにも大切に想ってくれている人を傷つけなければならない。
「……清正」
「彩芽?」
戦も終わったと言うのに、清正は日々の鍛練を決して怠らない。
こういうところは幸村も同じだった。
「どうした…?」
汗を手拭いで拭いながら彩芽に近付く。
とても辛そうに自分を見つめる姿を見て清正は何かを察したようだった。
「もしかして…この間の返事か?」
「…っ!」
ビクリと一瞬肩を震わせた彩芽を見て清正は確信する。
「彩芽」
「………」
清正の声はひどく優しい声だった。
彩芽は涙が溢れそうになるのを堪えるのに必死だった。
「…私ね、上田から此処へ来た日すごく不安だったの」
「あぁ…」
「そんな私に…清正は大坂も好きになれるって言って笑ってくれた、距離を縮めようとたくさんお世話してくれた…」
「………」
いつも気にかけてくれる清正の存在は彩芽にとって慣れない土地でとても安心できるものだった。
「清正の言うとおり…私、此所が…豊臣のお家が大好きになれたよ」
気さくな秀吉、優しいねね、明るい正則に見守ってくれる三成、そして清正。
きゅっと下唇を噛み、清正の目を見る。
「それでも、幸村の事…ずっと忘れなかったの、ずっと…私の中に、忘れる事なんて…吹っ切ることなんて出来なかった…」
堪えていた涙が溢れた。