第3章 雨でも晴れでも傘はいる
「ねぇ阿伏兎?」
「何だ?」
「もう地球での仕事は終わりだよね?帰らないの?」
ビルの上で下を見下す。
あれから探してようやく見つけた阿伏兎は、難しい顔をすると俺に言いにくそうに口を開く
「それがな団長、今日の朝方うえのほうからの連絡で、第七師団の団長のアンタに会いたいと言っている奴がいるらしい。しかもそいつが許嫁になるかも知れねえって話が来てな、団長に彼女がいねぇならってんだが、団長が女に興味がねぇのを知っててのことに決まってやがる。だから団長が寝ている間にでもいい女がいねぇか探してたんだが、どいつもこいつもおんなじ顔してやがる。」
「…つまり?女を連れて帰ればその誰かも知らない女を許嫁なんかにしなくていいってこと?」
「そーゆーこった、まあ団長が許嫁にしたくねぇっていう権利はある話みてぇだからな、女を連れて帰らなくても、どうにかなるってことよ。保証はねぇけど」
「ふーん、」
俺は座っているからあいている足をぶらぶらと動かす。
阿伏兎は相変わらずで、俺が答えを出すのを待っているのだろう。
その時また、ふ、と。
昨日の女の怯えた顔が浮かんだのだ
「ねぇ阿伏兎。」
「どうした?」
「俺、連れて行きたい奴がいる」
いつもの笑顔でニコニコと、阿伏兎ははてなマークをあたまの上に浮かべる。
「地球にお気に入りがいたとはなぁ、いつ見つけてたんだよ」
「昨日だよ、お気に入りなんかじゃない。ただすれ違ったバカそうな女」
「ほう、そりゃあ見てみてぇもんだな」
どこにいるのかも分からないのに、俺は何を言ってるのかな?
「それで?そいつぁどこにいるんだ?」
「わからない」
「分からない、はーと。じゃねぇよ、このすっとこどっこい」
「あはは、まぁいいでしょ。まだ時間はあるんだし、それに…」
「?」
なんだか今日も、会えそうな気がするんだよ。