第16章 傘の一族
真っ暗な世界の中
私はゆっくり堕ちてゆく
遠くに見える光は掴めない。
誰か、助けて
声も届かない。
ただまっすぐに
見える世界が狭くなっていく
息が止まりそうな
そんな世界
「……」
夢か…
目を開けると
ひとりで、ベットの上に眠っていた
なんだか宇宙に堕ちてたみたいだった
寂しくて、暗かったです
部屋を見渡すと
…傘がありません。
神威さん、いないんですね
神威さんはあまり部屋にいない
昨日も私は寝たけど
神威さんはどこで寝てたんでしょう。
コンコンコン
ここへ来て始めての朝
誰かが部屋をノックしました
部屋から出ないから大丈夫だろう、と
ドアを開けると
そこには優しく微笑む男性が
「…はい」
「お食事を持ってまいりました、さん」
「?」
「神威のお気に入り、ふふ、可愛いですね」
「えっと…」
「僕はこの船の団員達の医者。紗也(さや)といいます。神威から話は聞いていますよ」
戸惑っていると紗也さんは食事を持って部屋に入ってきました。
「大丈夫、僕は特別にこの部屋の出入りを許可されていますから」
その言葉に安心して
私は安堵の息を漏らした。
紗也さんはテーブルに食事を置くと
こちらを振り返って笑う。
「私は悪党ではありませんから、あなたの味方ですよ、困ったことがあればいつでも呼んでくれてかまいません」
「ありがとうございます」
「あなたもとんだ災難ですよね、かわいそうに」
そう言って座らせてもらいますね、というと
紗也さんは椅子に座る
私も椅子に座って正面を向く
「手、見せてもらえますか?」
そう言い差し出された手に
阿伏兎さんが巻いてくれた包帯の腕を出した。
「腫れちゃってますね、痛いでしょう」
包帯を外しながらそう言って
紗也さんは
「え…」
涙を流しました。