第2章 雨の日に傘もささない
「さん!さん!」
視界がぼやけています、聞こえるのはえっと……久野瀬さんの声
どうやら頭が痛くてお風呂で意識を失っていたらしくて、鼻まで水が浸かって死にそうだったとかなんとか。
この頭痛が目からくるものだと知っているけれど、久野瀬さんは言いませんよね。
「久野瀬さ…ん、おはよ…」
力なく笑ってみせるとかすかに久野瀬さんの顔が見えます。
すごく心配そうな顔をしているなあ
「大丈夫ですよ、私は生命力だけは強いんだから」
「さん…またそんなことばかり」
クスッと笑ってくれる久野瀬さんは本当に優しい人だと思います。
「あはは…ほんとでしょ?」
「はい、さんは強いです」
泣いている?ぼやけて焦点が合わなくて見えません
笑っているように見えるけれど声は…
そんなことを思っているけど、どうやら体はきついみたいで、私のまぶたは重く閉じていった。
「おやすみなさい、よく寝てくださいね」