第12章 おいてきた傘
「あははっ、てゆーかアンタ、誘拐したやつにありがとうとか、ホントおもしろいね」
楽しそうな声で、神威さんは言いました。
「そうでした」
「はぁ、あんたみたいなやつ。初めてだよ」
「そうなんですか」
「うん」
神威さんの歩幅は大きいです。
どんどん道が進んでいるようです。
それにしてもこの廊下は長いです。
抱っこされているから振動が伝わりますが、
ゆっくり歩いているようです。
これもわたしのためなのでしょうか
「…」
うーん、それはさすがにないですかね
だけど、なんだかそんな気がしたんです
この船?は広いですね
私は船といえば海に浮かんでいるものだと思っているのですが、近くに海なんてないですよね?
どうなっているのでしょうか。
「ついた、ここだよ」
「…」
そう言うと神威さんは立ち止まり、カチャカチャと鍵を開けているようです。
反対を向いている私には何も見えてないんですけどね
ドアが空いたのか、また少し
神威さんが歩きます。