第2章 雨の日に傘もささない
ザーーーーーーーーーー
さっきまでの天気が嘘のように
空からは大粒の雨が降り注いでいます。
ぴちゃぴちゃと歩く音はかすかに聞こえ
打ち付ける雨音に、頭が痛くなりそうです。
いや、もとから頭は痛かった気がします
そんなことよりも前が見えない事が少し不安で。
もう少しで家につくはずだと信じ
なんとも重い足を私なりに急がせます。
急ぎながらに、いい匂い。そんなことを思って
さっきまで熱かったアスファルトは、雨が染みこんで独特な匂いを放つ。
これが嫌いな人は雨も嫌いなんですかね、めったに外に出ない私にはこんな自然現象を体で感じられることが嬉しくて仕方がありませんでした。
トン
「…?」
「…」
鈍い私は人にぶつかったと気がつくまで2秒。
「あ…ごめんなさい」
顔は見ずに頭を下げる
「……」
返事は帰ってきません、雨のせいか足音も聞こえない。
まだ、いるんですかね?
それとも怒って無視していってしまったのでしょうか?
気になって目線を上げた
「?!」
いるかも。とは思っていたのに驚くなんて
「…前が見えなかったのかい?」
オレンジ色のきれいな髪の毛の男の人が私を見下げて立っています。怒ってるのか、なんて思ったけれどその人は怒るとは正反対にニコニコ笑っていました。
「え…」
「なにも見えてないみたいにさっきからまっすぐ歩いていたね、みんな避けていくのが当たり前とでも思っているのかい?」
貼り付けの笑顔が怖くて、がたがたと震えた。
「ごめ…なさい、違うんです」
「それにどうして傘をさしていないの?そんなに雨が好き?」
「あ…傘…」
そうだ、雨の日は傘が必要なんでしたか。いや、そんなことはわかってましたよ。
でもお金を持っていなかったからそのままにしてたんでしたっけ?
「忘れてました」
「…ぷ、忘れてたって」
眉毛を下げてその人は笑う。そんなにおかしいことをいいましたか?
「じゃあ私帰ります、ご迷惑をお掛けしてすみませんでした。」
もう一度頭を下げるとまたまっすぐ歩き出した。
うしろでさっきの人が見ていたことは知るはずもなく。