第8章 傘の下
見つからない。
ずっと探していたのに
「なんで?」
「んぁ?」
「なんで見つからないの」
会える気がする。なんて思っていたのに
もう真っ暗じゃないか
「手がかりが少なすぎるぜ」
「…ちっ」
いらいらする、なんで俺はこんなにムキになってるの
何度も何度もあの女の怯えた顔が浮かんで、
なんだかすごくもう一度見てみたくて、
…悔しい。
「…」
「はぁ…」
「今日は帰るか?」
「…うん」
阿伏兎が傘を閉じて言った。
あ、雨やんだんだ
つられて傘を閉じる、夜。唯一傘のいらない時間
「…」
「…」
ブロロロロロロロ
横を二人乗りのスクーターが通った。
うるさいなぁ、なんだか今日は機嫌が悪くて
雨上がりの夜道を足早に歩く、
「やっぱり世界は広いね」
「案外近くにいたりしてな」
「あはは、そうかも。ね」