第6章 傘に隠れて見えぬもの
団長は女を探しだしてからほとんど何も喋らなかった。
どれだけ集中してるんだ?
そんなに許嫁が嫌だったのか?
そんなにその女が気に入ったのか?
いいや、そりゃあねぇな。
団長が今まで女と楽しそうにしているところなんか一度も見たことがねぇし、女の話題なんて出したことはなかっただろ。
ましいてや”恋”なんて、団長は意味を知っているのか?
戦うことにしか興味が無い男が、女に時間を使うと思うか?
いやでも、団長も若ぇし
俺が知らねぇだけで、あんな事やこんなことをしているかも知れねぇのか。
まぁ、俺には関係ぇねぇがな
それにしても歩いた気がするんだが、おじさん、少し疲れちまったよ
休憩しねぇかなんて言って、近くにあった椅子に座った
ここでは小さな屋根があって傘は必要ねぇから俺達は傘を閉じ前を見つめる
「…」
ちらっと横を見ると団長は、ふぅ…と、眉を下げて息を吐いた
「…」
なんだか違和感があるんだよな、
許嫁が嫌だからといって、俺はオブラートに包んだが、団長ならそいつを殺してでも嫌がると思っていたから
女に興味ねぇ団長が許嫁が嫌だからって、女を連れて行く方を選ぶとは思っていなかった。
「団長、そいつの髪型は?」
「長かったよ、黒色で、肌は光を浴びてないような色をしてた。夜兎みたいだったよ」
「ふーん」
そして俺はあたりを見渡す
そんな奴いっぱいいねぇか?
肌の色は別としても、長い黒髪が多すぎて、俺は力になれそうにもねぇな
「いつまで、地球に居られるの?」
「最低でも後5日だな、今回の地球での仕事は一週間以内にって話だったし」
「そ…」
そう言って団長は屋根を見上げる
屋根を伝って俺達の足元に落ちてくる雨粒を
団長は何かを思うように見ていた。