第4章 華~選択~
とある夏の夜、○○は珍しくも浴衣に身を包み、式神達とともにほんのひととき、漆黒の天に咲く華を楽しんでいた。
とはいえ、おとなしく花火ばかりを楽しむような輩ばかりではないのは先刻承知である。
まして、自らの式神を使役するというより仲間として遇する○○という、一見何処にでもいる普通の少女にしか見えない陰陽師に、今や彼女の式神達は深度の違いはあれど揃って好意を抱いている。
中には邪な欲を抱く式までがある中にありながら、その辺りのことにはてんで幼く鈍く、ついでに奥手で、のほほん、と構えている○○には是非とも『もっと緊張感…というより危機感を持て』と指導してやりたいところだが、それはさておき。
目下のところ、水面下での熾烈(?)な牽制ゆえに○○の身の安全が保たれているという、皮肉な状況にある。
が、そんな偶然の幸い(?)がいつまで続くわけもなく。
夜空に咲くのは大輪の華……。
しかし、己が手によって少女を咲かせたいと狙う式の一部が、この宵闇を逃すはずはなかった。
殊に、夜というものは魑魅魍魎、あやかしの刻。
轟音と共に爆ぜる空の華に釘付けな○○の傍らに、いつの間にか現れたのは果たして……。
<地獄鬼だった>
<畜生鬼だった>