第3章 バンドコンテスト
『ありがとうございました!素晴らしい歌声でつい聞き入ってしまいました!』
ふぅ、と息をつき、観客の方を見る。つい、黄瀬の姿を探してしまうのは好きな証拠だと思わず苦笑してしまう。
「ありがとうございました!」
皆で頭を下げて感謝をし、ステージを出ていく。そして次に待機していたバンドにバトンタッチをした。
「はあ…終わった…」
「良かったんじゃないか?」
「椿ちゃんのお陰だね!」
体育館を出て外に出た。汗ばんだ肌に涼しい風が吹き付け、心地いい。それぞれ、お礼を言われて少し照れながら頷いた。
「こちらこそ、ありがとう」
「もう優勝は決まったなっ」
「なんでだ?まだ、わからないだろ?」
篠原は微笑を浮かべて俺を見た。
「わかってないのは氷童だ、明らかに女子の投票率が高いに決まってんだろ?」
言われてみれば…女子達の反応が他のバンドと違っていた。それを言われるとなんかズルをしたような感じになる。
「ズルじゃないから安心しろ」
俺の心の中を見透かしたように篠原が発言した。それに安堵し、微笑んだ。