第1章 転校生は美少年?
「…ムカつかない訳ないだろ…」
その途端、目の奥が熱くなり、涙が溢れそうになる。それを必死に押さえる。泣かないと決めたのだから。
「…辛かったんスね?」
抱き締める腕の強さが少し増した気がした。男子に抱き付かれた事などなく、どう行動していいかわからない…
「…俺が氷童っちの彼氏になってあげるっスよ」
「…お断りだ…!」
その言葉を聞いた瞬間、急に怒りが混み上がり、黄瀬の腕を無理矢理振りほどく。そんな情けなんか…
「いらねーんだよ…そんな同情」
「……」
黄瀬はなおも少し悲しそうな顔をして俺を見ていた。何度かイタズラで彼氏になってあげると言われた事があった。その時、俺は本気になってしまっていた。だが、ただのからかいだと知って随分とそいつをボコボコにしたものだ。どうせ、黄瀬もそうなんだ…
「…悪い、帰る」
「…あ、氷童っち!送っていくっスよ!」
そんな黄瀬の優しさを無視して鞄を持って体育館を出ていく。なんで俺に優しくすんだよ…勘違いするじゃねーか…!
「バカか…俺は…」
ボロボロと目から涙が次々と流れては地面に落ちる。俺の涙は黒い跡を少し残してスゥと消えた。黄瀬が追い付いてくる前に学校を出るか…