第38章 会わない時間
〈どうぞ。温かいうちに…〉
そう言って可愛いらしい
ハートの絵が描いてあるカフェモカを
マスターはあたしの前に出してきた。
『……はぁ…おいしい』
〈今日はお一人なんですね…〉
コーヒーを飲んでいると
マスターが微笑みながら言った。
『あぁ…たまには…』
〈そうですか…〉
雅紀は何してるのかな…
まだ悲しそうな顔をしてる?
それなら、あたしが抱き締めてあげないと
いけないのに…
できない。
『そういえば…奥様は?
この前デザインをしたって…』
確か雅紀と淹れてもらった
特別な部屋…奥さんがデザインしたって…
〈妻は2年前に…〉
『あ…あたし…ごめんなさい…』
〈いいんですよ。
今も心の中で妻は残っていますから…〉
『心の中で…』
雅紀もきっと心の中であたしを
今も思ってくれてるのかな?