第38章 会わない時間
あれから一週間が経った…
気持ちも冷静になってて
ただ雅紀の悲しそうな顔を思い返すと
胸が締め付けられて…
また一人で海に来た。
夏の訪れを感じさせる風に
巻いてたストールがなびく。
“結婚”なんて
ちょっと前のあたしなら考えなかった。
だって仕事を愛してたから…
でもね、それ以上の人が出来たの。
それ以上に愛せてしまう人が出来た。
〈あれ?お客さんはこの前の?〉
『え…あ…喫茶店の…』
〈冷えますよ。
うちに来てくださいな?〉
あたしにそう言うのは
この前の喫茶店のマスターだった。
『…じゃあ』